磯蔵酒蔵 ~杜氏にお聞きする日本酒の魅力と働くということ~(茨城県・高校生)

「魅力のない県」の1位(『地域ブランド調査2013』ブランド総合研究所)になってしまった茨城県。しかし、茨城県には知られざる名産がたくさんあります。レンコンやホシイモ、メロンにお酒!今回の職場観察は、もう一度地元茨城県を見直そうという思いが出発点です。名産品を研究していくうちに、実は『名酒』が多いと気が付きました。今回は伝統的な製法でお酒を作る、笠間市の磯蔵酒造さんを訪問しました。

 

職場観察実施日:2014年6月26日

記事を読む




計画進捗

「ここの蔵の蔵開きは県内でも有名。最近では県外からも人が集まっていて、外国人の方の参加も多いようです。毎年、噺家さんのステージなどもあって、趣向を凝らした新酒の蔵開きをしていますよ」という職員の情報を基に、磯蔵酒造さんのサイトをチェック。アプローチ開始です。茨城が他県に誇るお酒の現場に足を踏み入れます。

事前打合せ ・ 事前学習

おうちの人はどんなお酒を飲んでいるかな?
おうちの人はどんなお酒を飲んでいるかな?

<事前打合せ>

5月13日、連絡をさせていただいたところ、蔵主さんである社長さんはご不在とのこと。趣旨をお話し、連絡を待つことに。翌週、「酒蔵の案内は可能ですよ。地元の小学校から大人の方まで幅広く見学に来られます」とご快諾いただき、日時が決定しました。酒蔵の見学にふさわし

い服装等を教えていただきました。

 

<事前学習>

6月19日午後、事前学習実施。大人には馴染みのある「お酒」でも、生徒にとっては未知。ましてや『日本酒』は遠い存在。そこで、事前学習では身近な『お酒』について考えてみました。

「酒蔵を見学したことはあるかな?」の問いに、ほとんどの生徒は「無い」と回答。「ワイナリーの見学をしたことはあるが、日本酒の酒蔵は…」という声もありました。

続きを読む

次に、「家族はどんなお酒を飲んでいるかな?」と聞くと、「ビール」「芋焼酎」「カクテル」「ワイン」が多数。「日本酒」はなかなか出てきません。

日本酒のイメージを聞くと、「度が強いと聞いたことがある」「初心者向けではないのでは」「SAKEと呼ばれて海外で注目されている」「匂いがする」という反応。そして、「お祭りやイベントの時は日本酒が多いと思う。木の樽に入っているのを夏に見かけた」「結婚式で見た」「家を建てる時に見た気がする」と、それぞれ記憶が蘇っているようです。日本酒が生活に結びついている面に気が付きましたね。

 

そして、最後に、「酒蔵」で働く人たちをイメージします。どんな人たちが働いているのかな。来週の酒蔵見学が本格的に楽しみになってきましたね。

 

6月26日、職場観察当日。再度、服装や持ち物の確認をし、いざ出発!

当日の様子

6月26日、12時30分に校舎集合です。電車に乗って笠間市稲田に向かいます。「常磐線は乗っているけれど、水戸線に乗るのは初めて」という生徒もおり、途中の駅での乗り換えが既にドキドキです。

到着するとそこは日本らしい「和」の世界。中から半被を着た杜氏さんがお見えになりました。担当していただく杜氏の石川さんです。石川さんは杜氏の世界ではお若い方で、ご自身が杜氏になったいきさつ、高校時代のことなどを織り交ぜてお話してくださいます。その面白さに、生徒も職員もどんどん引き込まれていきます。

続きを読む

「蔵の前にある松は、新しいお酒が出来ると新しい松に取り替える。それが新酒ができた合図です」なるほどと、みな頷きながら真剣に聞いています。「お酒造りで大切なのは水。酒蔵には必ず井戸水がある」とお聞きし、試飲させていただきます。キンキンに冷えていて美味しい水でした。

また、お酒に適したお米と適さないお米、原材料、お酒の値段の付け方などを伺います。磯蔵酒造さんでは「なるべく地元のものを」と半径10キロ圏内のお米を多く利用しているそうです。

「味は好みです。先入観を持たずに好きなものを選んで欲しいから日本酒度や酸度等は表示していな

い」とのこと。「皆、成人していたら試飲できるんだけどね」お酒のラベルを見せていただくと、漢字一字が載っています。陶芸家の先生が書いてくださっているそうです。

 

続いて、お酒の作り方を見学します。「麹菌や酵母菌など生きた菌がお酒を作るので、仕込んでからは眠らずに菌の声を聞く。暑くないか、寒がっていないか、じっくり見て調整していきます」とのこと。麹作り、酵母培養、仕込みと全て手作業なので、眠れず休めず、若い頃は石川さんも葛藤があったそうです。

その後、お酒を絞る機械も見せていただきました。工程を確認すると、これもほとんどが手作業。手間隙かかっていますね。殺菌の仕方は実は日本人が発見したものだそうです。

最後に、瓶づめの作業場で、瓶の洗浄を見学しました。ここでも大量のお水やお湯が使われていました。

手作業が多いことに生徒たちは驚き、杜氏の石川さんをはじめ酒造りに関わる人たちの「こだわり」を感じることができました。

磯蔵酒造さん
磯蔵酒造さん
大切な井戸水
大切な井戸水

新酒できました、の合図です
新酒できました、の合図です
お米を蒸す巨大な釜!
お米を蒸す巨大な釜!

麹室で眠らずに番をすることも
麹室で眠らずに番をすることも
お酒が眠っているよ
お酒が眠っているよ

事後学習

6月27日、事後学習を実施しました。まず、学びや気付き、感想をワークシートに記入。周囲の人と意見交換をします。石川さんにお礼を書いている生徒たちの表情は生き生きとしており、昨日の余韻が残っているようでした。

所感 ・ 振り返り

「杜氏」の方とお会いする機会は滅多にありません。お酒を作る人たちの情熱やこだわりを目の当たりにし、「働くということ」に新たな価値観が生まれた様子でした。「安定した仕事」「就職できればいい」といった価値観だけでなく、「積極的に関わって仕事をすること」「こだわりを持って働くということ」を学びました。茨城県で親しまれ、愛されるだけでなく、県外、そして世界に誇れる磯蔵酒造のお酒。二十歳になったら磯蔵さんに行ってお祝いをしたい、と生徒たちが話していました。

協力者 ・ 生徒の声

<協力者の声>

やる気、情熱を持って働いて欲しい。積極的に関わって考えながら仕事をするのと、ただ働くのは違う。若いみんなには、情報を集めて興味を持てる仕事をして欲しい。一度きりの人生、仕事選びと結婚相手選びは慎重に!たくましく生きてってください。

 

磯蔵酒造

杜氏 石川 博之さん

 

続きを読む

<生徒の声>

・どんなに苦しくても機械に頼らず人の喜びのため追求し続ける姿はとてもかっこ良かった。これぞプロ魂。当然のことですが、今までお酒を飲んだことが無かったので、作り方もくわしくは知りませんでした。色々な用具、製造過程、その際に使う部屋、全て初めてでワクワクしました。とても勉強になりました。(高3男子)

 

・日本酒を作るのに時間がかかっていて凄く管理が大変で、温度が1度だけでも違うと味が変わってしまうことに驚きました。酒造の見学は初めてで知らないことだらけでしたが、お話をお聞きできてとても楽しかったです。(高2男子)

 

・お酒を作る時期は本当に大変そうですが、美味しいお酒を作りたいという魂が伝わってきました。働いている方の大変さが身に染みました。(高3男子)

 

・丁寧に正確にこなすことがお酒のおいしい秘密なのかなと思いました。とても手がかかっていて、一つ一つの工程を心を込めてしていることが伝わってきました。本当にありがとうございました。(高2女子)

 

・気付いたことは、皆さんが仕事に生きがいを持って取り組んでいることです。仕事は無理してやるものでなく、楽しく取り組むものだと実感しました。お酒が飲める年齢になったら、磯蔵さんに出向きたいです。(高3男子)

 

・特に印象に残っているのはお酒のラベルです。かっこいいラベルだなと思いました。(高3男子)

 

協力先名・URL

磯蔵酒造

http://isokura.jp/

実施校・参加者

私立 第一学院高等学校 高萩校(水戸キャンパス) 2・3年次生

男子6名、女子6名