海外で活躍する日本人~JICAの仕事~(東京都・高校生)

「世界は今」という授業(ホームルームにて実施)で、我々の恵まれている環境から、国際貢献にいたる内容を確認。その授業を受けて実際の国際貢献について海外での体験をした方に話を聞こうということで、市ヶ谷にあるJICA・地球ひろばに足を運び、青年海外協力隊の元隊員の体験談を聞くことを計画した。希望者を募り、訪問することを先方にお願いした。先方も、こうしたプログラムを継続して実施しており、快く受け付けていただけた。

 

職場観察実施日:2013/11/27

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計画・進捗

「世界は今」というDVDから、貧困が更なる貧困の連鎖につながること、その原因として教育を受けられないことなどがあると知った。背景には自然災害もあれば、紛争や内戦といった国内情勢の不安定さがあることを知る。しかし、現在日本のような平和で豊かな国に暮らす生徒にとっては、本当の意味での大変さや悲惨さは伝わっておらず、リアルに体験する機会にはなっていない。

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そこで、実際こうしたところで活動してきた方の生の声を聞くことによって、その一端が垣間見えるだろうということで、JICA地球ひろばへの訪問。青年海外協力隊元隊員の方のお話などを聞くことができればと、今回の訪問を計画した。

事前打合せ ・ 事前学習

こちらの趣旨を踏まえ、地球ひろばの館内についても青年海外協力隊元隊員の方が案内をしてくれる。訪問時の特別展示が、日本の緊急援助隊についてということで、ちょうどフィリピンに大きな災害をもたらした台風30号の話題もあり、良いタイミングでの訪問となる。

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訪問希望の生徒たちは事前に共通のDVDを見ていて、自然災害の発生が貧困につながることを学習しており、常設展示の中には自然災害を防止する日本国内の取り組みや、発展途上国との比較などもあることから、生徒にとって意識しやすい内容になるのではないかと期待した。

元隊員の体験談は、映像などを交えながらリアルな内容をということで、先方にお願いした。

当日の様子

11月27日、JICAはこうした体験学習や職場体験の受け入れに慣れているようで、入り口の本日の訪問校ボードに「第一学院高校」の学校名があることに気づき感動。時間設定もあり、自分たちのために時間をとってくださっているということを、少し自覚することができた様子でした。

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展示ブースを案内してくれた男性は、ミクロネシアに派遣されていた元隊員の中野さん。ミクロネシアがどこにあるのかが分かっているのか少し不安な感じでしたが、海に浮かぶ島国という認識はあったようです。中野さんからは自然災害のことについて話を聞き、そこに派遣される緊急援助隊についての詳しい説明を聞きました。さらに救助隊の装備について、実物を見ながらの説明や簡単な使用方法を教えてもらいました。倒壊した建物の隙間などから不明者を探すための道具、棒の先にカメラがついた「ボウカメ」を実際に使ってみると、現場の緊張感が感じられます。海外に比べ、はるかに自然災害に対する備えがしっかりしている日本で生活していることを幸せだと感じられたようです。

場所を変え今度は女性の元隊員、上原さんに体験談をお聞かせいただきました。彼女の派遣先はウガンダ。首都ダカールは、パリ・ダカールラリーのスタート地点。そこでの彼女の仕事は、内戦で傷ついた少年兵のカウンセリングや、エイズを中心とした感染症の予防だということです。簡単に人を殺すこと、傷つけることをいとわない状況を少年兵に植え付ける話や、感染症に対する知識の少なさが大きな課題であるという話を聞きました。実際そんなところで仕事をすることは怖くないのか、感染症に対して心配ではないか、親は心配しないのか、といった生徒からの問いかけにも丁寧に対応していただきました。やはり、こうした仕事に向かう上で大切なのは、高い志と、正しい知識、そして人と関わることに対する誠実さが必要であるということを感じました。経験からしか伝えることができない本当に貴重なお話でした。

「本日の訪問校」の掲示に校名発見
「本日の訪問校」の掲示に校名発見
展示一つ一つを丁寧に見学
展示一つ一つを丁寧に見学

展示ブースで全体説明
展示ブースで全体説明
緊急援助隊のウェアーです
緊急援助隊のウェアーです

事後学習

日本という島国にいたら、なかなか知ることができない大切なことを、外の世界に出たからこそ知ることがきる。そんな機会になったのではないかと思います。生徒から出された感想は、次のような内容です。

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・東日本大震災のような大きな災害が発展途上国で起きていたなら、もっと大きな被害になっていたと思った。ただ、日本のようにある程度備えをしていても、自然の力は人間の考えや想像をはるかに上回るものともなる。自然の力を改めて感じることもできたし、日本に暮らす幸せと日本人としてできることを改めて考えるきっかけとなりました。

・日本の技術力の高さは言うまでもないが、それが日本だけのものであってはいけないということを強く感じた。私たちにもできることを、それぞれが考えて取り組む必要があると思いました。

・上原さんのような女性がアフリカのような地で活躍していることに驚かされました。自分だったら不安一杯でまず行こうと思わないだろう。お話を聞いて、やはり何かのきっかけで人の役に立ちたいという高い志を持つことによって、大きな力を発揮できるのだなと感じました。

・自分が日本に暮らしているということは、本当に幸せなことなのだということを強く感じました。

・自分も何か人の役に立てるよう、がんばりたいという気持ちになりました。

所感 ・ 振り返り

事前のDVD学習の内容も含め、ファシリテーションする我々現場の職員には限界がある。それはやはり、リアリティーという部分の欠如ではないかと思われる。しかし、我々がそれをリアルに経験する機会をたくさんつくることは難しく、そうした点からもこのような外部機関と積極的に連携をはかり、生徒の興味・関心を高める授業を実践していくことが大切である。

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さらに、こうした授業を生徒が受身ではなく、自らの意思で調べ学習などをした上で、「ここへ行って、実際の様子を聞いてみよう」とか、「経験された方を探して、取材してみよう」というレベルになることが、生徒の成長につながる学びの機会となると考える。現在、教育現場は生徒に与えるという作業が多いが、生徒が主体的に取り組んでいくことができればと強く感じた見学となった。「百聞は一見に如かず」。

実施校・参加者

私立 第一学院高等学校 高萩校(四ツ谷キャンパス) 

男子6名、女子1名