租税について考える(タックススペース★UENO)(東京都・高校生)

少子高齢化のわが国にとって、税収の減少は国家運営に多大な影響を与えることとなる。海外では、国家といえでも財政が破綻する状況も起きている。教科の学習についてもそうだが、こうした状況をしっかり理解した上で、租税の大切さを認識する必要がある。教科書だけではリアリティの面で物足りない。そこで税務署に足を運び、租税や税務署で働く人たちのことを知り、仕事の一部を体験した。

 

職場観察実施日:2014/6/11

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計画・進捗

現代社会や政治経済の授業でとても重要な租税と財政の問題。生徒の興味・関心は高いとはいえない状況である。そこで、大切なことは社会とのつながりを意識できることだと考えた。まずは税務署のサイトを検索し、上野税務署では幅広い学齢層に対して租税教室や税務署の見学を実施していることを知った。

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租税の減少は国家財政の大きな問題であると共に、憲法には国民の義務として納税が明記されている。教科の学習だけでなく、納税の義務を果たす大人になるためにも重要な内容だと考え、今回の職場観察を計画した。

事前打合せ ・ 事前学習

5月21日 税務署のサイトから申込み

5月26日 税務署の担当者から確認の電話をいただく。こちらの趣旨を説明。租税教室ならびに税務署の見学をさせて欲しい旨を伝える。

5月29日 FAXで当日の日程表が到着し確認。路線価を使っての不動産評価の体験も盛り込んでいただけた。

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6月11日 10名の参加希望者に事前学習(30分程度)。現代社会の教科書を活用し、租税の意義や日本の財政について簡単に説明。諸注意などを行った上で、税務署へ出発。

校舎での事前学習
校舎での事前学習
「はい。この内容が分かる人?」
「はい。この内容が分かる人?」

当日の様子

上野税務署に到着すると、入り口右手に租税教室用のスペースあり。そちらに案内されて、各自ノートパソコンが置かれた机に向かって着席。簡単な挨拶の後、まずは租税教室で、国の予算と租税の関わり、諸外国の税金について40分ほど学習。用意していただいたレジュメに沿っての学習だったが、生徒には少し分かりにくい内容もあったので、引率者から簡単に補足説明を行った。「なるほど」という3年生と、まだ疑問の表情を浮かべる1年生とでは、知識に差があることを感じる。

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次は、税務署内の見学。我々大人になっても、そう何度も足を運ぶ場所ではないところ。実際にどんなことをしているのかを知る機会になったのではないかと思う。知らないと敷居が高いように感じ、相談に訪れることもつい遠慮がちになってしまう。しかし、一度でも足を運んでいたら、大人になっても行きやすいのではないかということも感じた。多くの人がパソコンに向かって黙々と仕事をしている姿に、窮屈さを感じた生徒もかなりいたようだ。

そして、路線価を使って、土地の面積に対する価格計算を行った。場所は東京ドーム、甲子園球場、そして銀座松屋の地価を計算したが、桁数の多さに大苦戦といった状況だった。

最後に、教科書は社会の入り口であり、そこで学んだ知識が社会を生きる上での基礎となることを伝えた。より良く生きるためには、基礎学力が不可欠であることを少しでも認識できたのではないかと感じた。

タックススペースUENOではいポーズ
タックススペースUENOではいポーズ
路線価をベースに地価の計算
路線価をベースに地価の計算

事後学習

アンケートと事後学習シートを記入
アンケートと事後学習シートを記入

終了後、税務署が用意してくれたアンケートへの記入と、学校から持参したワークシートの記入を行った。

その中には、以下のような感想が記入されていた。

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・税金について細かく知ることができた。滞納すると大変なことになることもわかった。社会を維持していくシステムとして、とても重要であると改めて認識した。路線価はあまり聴きなれない言葉だったが、調べ方や土地の値段の高さを知ることができた。(3年生)

・税の種類や、その使われ方などを改めて確認する機会となった。国家を維持・運営する上で、これ以上赤字を増やすことはできない。かといって、増税は正直嫌ですね。消費税も10パーセントになると、買い物でもかなり負担感が増すような気がします。無駄をなくし、みんなが適正な納税を行うことが大切だと思いました。(3年生)

・日本よりもはるかに高い消費税率の国があることに驚いた。税務署の中はとても静かで、みんなが黙々と仕事をしているのに驚いた。楽しく話をしたりとかないのかなと思った。(1年生)

・税務署が何をするところなのか分かった。税金を納めないと結構厳しく取り立てられるのだということも分かった。納税者としての責任を果たせるような大人になるようにがんばりたいと思った。(1年生)

・教科書で勉強するより面白かった。リアルに勉強できた。(1年生)


所感 ・ 振り返り

生徒の感想にもあるように、学習の面白さは「リアル」という点にあると思う。日々の授業では中々その「リアル」を演出できず残念だが、指導する側としては、いかにこの「リアル」を演出して、社会とのつながりを意識した授業ができるかがカギになると考える。公民という科目の特性上、受験に必要だからとか、良い点数を取るためということより、これからの人生にどう活かすかということが大切なポイントとなる。

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現場に連れて行くことも必要ではあるが、教師が積極的に外で学び、それを「リアル」に生徒へ伝えていくことも大切であると強く感じた。授業者として、刻々と変化する社会情勢を自らも積極的に学ぶ必要があると痛感した1日だった。生徒にも大変有用な学びの1日となったと思う。

協力者の声

高校生への教室というのは、あまり多くないので難しかった。ただ、これから社会で活躍する皆さんだからこそ、税に対してもしっかり意識した人生を送って欲しいと思っています。今後の活躍を期待しています。よかったら、税務官にも挑戦してみてください。

 

上野税務署 

税務広報公聴官付

平野さん

実施校・参加者

私立 第一学院高等学校 高萩校(四ツ谷キャンパス) 1~3年次生

男子10名(1年生5名、2年生1名、3年生3名)