呉服店での職場観察を通じて日本の文化を深く考える(埼玉県・高校生)



大宮駅東口に伝統的な佇まいの呉服店が在ります。日本の伝統学習として、ジョブシャドウイングのお願いに伺ったところ、快く承諾いただきました。店主の方から、創業の歴史、呉服や太物についての知識、やりがい、幼い頃より4代目として育ったことなどを伺いました。さらに、礼・心遣い・気配りと、失われつつある日本人の良きマナーもしっかり学ぶことができました。また、教員や大人として学ぶことも多く、生徒・職員共、感動を得る職場観察となりました。

 

職場観察実施日:2013/6/10

計画・進捗

明治22年の創業から124年間続いている老舗「呉服・太物・備前焼 田中屋呉服店」にて、職場観察をさせていただくことになりました。目的としては次の3つです。①日本の伝統文化である呉服業に触れ、着物・反物を知り、気付きや学びを得る、②伝統文化の継承(4代継承の難しさ・継承者の想いなど)を学ぶ、③自己のライフ設計及び今後の伝統文化を考える。

事前打合せ ・ 事前学習

6月4日 13時から14時、事前学習を行いました。和服や日本の伝統文化に興味・関心を持つ生徒が集まり、呉服(絹)や太物(綿や麻)の違いや、着物の構造、呉服屋さんの歴史(江戸時代に京都や近江から出てきて立売を始め、後に店を構えるようになる。明治時代に入ると、三越や髙島屋は百貨店に変化)を確認しました。伝統文化を学ぶことから、いつも以上に礼儀作法の重要性を伝え、挨拶・言葉遣いなどを練習しました。自己紹介シートは着物に関する興味・関心を主としました。また、事前に呉服屋さんを訪問し、こちらからの質問内容をご覧いただきました。

当日の様子

6月10日 13時、埼玉キャンパスに集合し、質問内容を最終確認して、呉服店へ向かいました。店主さん自らお出迎えをしてくださり、さすが「礼」を重んじる「商売」の世界を目の当たりにしました。また、畳に正座だと足が痺れるため、心遣いで生徒が体験する「場」に椅子をご準備いただきました。

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「場」は、畳の間より一段下がるスペースであり、店主さんは畳から着物や反物について実物を広げながら様々な話をしてくださいました。生徒からの質問にもご回答いただきました。以下にその内容の一部を記載します。

①着物は洋服とは違ってデザインが全て一緒なので、生地や染物で違いを出す。

②着物は1反(約11メートル)を切ることなく縫い合わせて作られており、無駄の無い構造です。

③洗う時は糸を解いて一枚の布にしてから洗い、着る人の身長に再度合わせて縫いあげるので、代々受け継ぐことができる。

④呉服屋さんとお客さんの関係は、本来一生のお付き合い(産着⇒七五三⇒入学式⇒卒業式⇒成人式⇒結婚式⇒喪服⇒死に装束)をする間柄である。

⑤時代が変わり、レンタル着物や外国製のプリント着物が導入されることで、昔ながらの呉服屋経営は今後難しくなる。

⑥店主さんは美術大学で日本画を学び、ヨーロッパに滞在されたこともあり、日本に限らず様々な国の文化を熟知されている。

⑦呉服屋とは本来サロンなので、お客さまの趣味や嗜好を熟知していなくてはいけない。

店主さんからの説明
店主さんからの説明
帯の模様の説明
帯の模様の説明

お店の前で記念撮影
お店の前で記念撮影
皆、真剣に聞いていました
皆、真剣に聞いていました

事後学習

6月11日 13時から14時、事後学習を行いました。参加者は「行って良かった」「視野が広がった」「人生に対する考え方が変わった」と口々に感想を述べ、感動を思い出しながら振り返りシートを作成しました。「体験で座った位置が店主さんから遠く質問できずにいたところ、店員さんが気遣って優しく話しかけてくださったことが嬉しかった」という生徒もいました。

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また、「お客さんが、『買った着物を着ている時に、周りの方から誉められました』と嬉しそうに話してくださる時に仕事のやりがいを感じます、という話が一番印象に残った」との声も聞かれました。店主さんも店員さんも、着物を売った後、お客様に喜んでいただけているか判るまでは、とても不安なのだそうです。生徒たちは、この気持ちはどの業界においてもとても大事なことであると感じたようです。最後に、感謝の言葉を1枚の寄せ書きにして、後日お渡しするために台紙のデザインも考え、仕上げました。

学んだ内容を振り返ってみよう
学んだ内容を振り返ってみよう
細かくまとめられるかな?
細かくまとめられるかな?

所感 ・ 振り返り

生徒たちにとって、貴重な経験になりました。教員としても非常に勉強になり、ぜひ今後に活かしたいと思います。「今はデジタルで簡単に情報が入ってきますが、若い頃に本物を見て、触れて、感じて得た感覚は一生ものなので、ぜひ様々な実践と経験をしてみてください」という言葉が心に響きました。改めてジョブシャドウイングの意義や良さを実感し、今回参加しなかった生徒たちにもさらにジョブシャドウイングへの参加を促そうと強く思った一日になりました。

主催団体・参加者

私立 第一学院高等学校 高萩校(埼玉キャンパス) 1・2年次生

男子4名、引率1名