被災地ボランティアを通じて、津波被災地の今を知ろう!(宮城県・高校生)




2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖を震源とするM9の大地震が発生。あれから2年が経過しました。仙台キャンパスのある仙台市中心部は、震災の混乱はすっかり収まり、震災の痕跡を見かけることは少なくなっています。今、震災の風化が懸念されています。そこで、地域連携授業の一環として、仙台市内の津波被災地の現状を知るため、また笑顔と元気を届けるため、被災地復興ボランティアを行いました。

 

ボランティア実施日:2013/6/5

 

計画・進捗

震災当初は、津波によって流出した家屋や泥を取り除く作業がボランティアの主な活動でした。現在では、多くの災害廃棄物の撤去は終わっています。しかし、表土の下にはまだまだ細々とした災害廃棄物が埋まっており、農地再生に向け、ボランティアの手で災害廃棄物の撤去作業が続いています。今回は、仙台市若林区を中心に被災地支援活動を続けている支援団体の方々のご協力をいただき、農地再生のためのボランティア活動を実施することにしました。

事前打合せ ・ 事前学習

6月5日(水)、事前打ち合わせで、ボランティアに必要な装備、準備物を確認しました。津波被災地は、多くの場所で商店や公共施設の再開が遅れているため、昼食や飲料水も持参しなければなりません。その他にも、長靴、軍手、ゴム手袋、カッパなど、準備物の多さに戸惑う場面もありました。しかしながら、復興支援活動を行うのに、支援先に負担をかけるわけにはいきません。震災から時間が経ち、被災時の記憶も薄れてきています。当日の活動では、支援団体の方に被災当初の様子や現状を伺い、被災地の今を考えます。

津波被災地では、被災した建物が今も多く取り残されています
津波被災地では、被災した建物が今も多く取り残されています
活動地では、商店や公共施設の再建が進んでいません
活動地では、商店や公共施設の再建が進んでいません

当日の様子

6月7日(金)、参加生徒は緊張の面持ちで、仙台駅に集合しました。津波被災地までは市営バスで30分ほど移動します。バスの車窓から、被災地に近づくにつれて民家が少なくなっていくのが分かります。市営バスも、震災以前は海水浴場まで定期運行していましたが、今では辛うじて集落の残る海岸から2Km付近までしか運行されていません。

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活動場所に到着後、まずは被災地の現状を支援団体代表の広瀬さんから伺います。今回の活動地である仙台市若林区の荒浜地区は、800世帯、2,700人が暮らしていたそうです。しかし今、その集落は津波によって失われています。話を伺っている場所から、かつての集落跡と防風林の痕跡を遠くに見ることができました。今、被災地では過疎化と急速な高齢化、コミュニティの崩壊が始まっているそうです。農業が生業である若林区で活動している支援団体では、災害廃棄物の撤去作業から、復興のための「農業を土台とした地域づくり」へと支援内容が変わってきていることを教えていただきました。昼休憩の後は、自転車で10分ほどのところにある農地で、午前中から活動している社会人ボランティアの方々と作業を行いました。若林区は全体の3分の2の農地が再開できる状態になっています。しかし、農地は災害廃棄物を撤去しただけでは、作業を再開できません。土を起こすためのトラクターを使うにも、表土の下に埋もれている、津波によって運ばれてきた堆積物を人力で撤去する必要があります。活動地の畑は、今まで3回ボランティアが撤去作業を行っていますが、それでもなお、石や瓦、コンクリート塊やアスファルト片が出てきます。生徒たちは2時間に亘って、畑から取り出された堆積物の仕分けと、くぼ地の整地を行いました。2時間の活動が終わると、午前中は元気一杯だった生徒の顔にも、疲れが見られました。拠点への帰路、海岸線に沿って自転車を走らせた生徒たちですが、その眼前には被災したまま取り壊されることなく残る家屋があり、防潮堤再建のための工事車両が頻繁に行き交っていました。生徒たちも神妙な面持ちで、被災地を後にしました。

さあ、出発です
さあ、出発です
まずは、被災の状況をうかがいます
まずは、被災の状況をうかがいます

社会人ボランティアの方々と合流し、ボランティア活動スタート
社会人ボランティアの方々と合流し、ボランティア活動スタート
畑から掘り起こされた堆積物を丁寧に仕分けしていきます
畑から掘り起こされた堆積物を丁寧に仕分けしていきます

事後学習

学校へ戻り、改めて今回被災地ボランティアに参加した理由や、実際に現場で見聞きしたことの振り返りを行いました。参加生徒は、被災した経験を今も良く覚えています。しかし、津波被災地から離れれば、ほぼ通常の生活を送ることができる今、「被災地がどのようになっているのか分からなかった」、「いまだに何も無かった」と、その現状を知らないことに改めて気づけたようです。

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被災当時より回復しているように見えても、まだまだ生活するには程遠い現状と、被災された方々が生活を再建しようとボランティアの方々の協力でがんばっている姿に、今後も被災地ボランティアを続けたいという意見も出ました。事後学習を通じて、協力できることがあることや、継続して活動することの大切さ、ボランティアであっても現地では綿密な計画に基づいて活動されていることなどを知ることができました。一つの体験から、さまざまな気づきを得ることができた貴重な経験となりました。

震災廃棄物はなくなりましたが、復興までにはまだまだ時間がかかります
震災廃棄物はなくなりましたが、復興までにはまだまだ時間がかかります
ボランティア活動を通じて、震災について改めて考えることができました
ボランティア活動を通じて、震災について改めて考えることができました

所感 ・ 振り返り

今回は、被災地に笑顔と元気を届けることを目的に、被災地復興ボランティアに取り組みました。活動を行って、支援団体の方々から復興にかかる時間の長さを聞き、実際にまだ復旧もしていない農地を目の当たりにし、改めて震災のことを考える機会になりました。ボランティア活動を受け入れてくださった支援団体の方々や、全国各地から今もなおボランティアに来てくださっている方々とともに活動をすることで、一人ではなくみんなで協力し復興に向き合う意識を再確認しました。

主催団体・参加者

第一学院高等学校仙台キャンパス 2・3年次生

男子3名、女子1名