報道の現場から、仕事の意義と責任について考える(兵庫県・高校生)

神戸新聞社の金居光由さんにお越しいただき、お話いただきました。現在、読者サポートセンター長兼NIE推進室長をされている金居さんは、元報道カメラマンで、阪神・淡路大震災での取材体験をふまえて講話いただき、伝えることや記録することの大切さ、「新聞」というメディア媒体の価値についてを考えさせられる機会となりました。

 

しごと講話実施日:2013/5/29

計画・進捗

昨年度、神戸新聞社を見学し、新聞作りについて学ばせていただきました。その時に案内してくださったのが金居さんで、元カメラマンで阪神・淡路大震災の際にも取材活動を行っていたというお話を聞きました。そこで今度は、カメラマンや記者の仕事についてや、大震災の時のことを生徒たちにお話いただきたく思い、ご連絡させていただきました。こちら側の趣旨や想いをご理解いただき、今回の講話が実現いたしました。

事前打合せ ・ 事前学習

事前に教員が金井さんを訪問し、お話いただく内容の打ち合わせをしました。こちらがお話いただきたい・生徒に聞かせたいことと、金居さんご自身がお話になりたい・伝えたい想いを合わせていき、講話内容や流れをつめていきました。

 

講話当日の1週間前の5月22日、金居さんから事前に『神戸新聞の7日間』というドラマを見ておいてほしいとご提案いただき、事前学習として鑑賞会を行いました。これは、阪神・淡路大震災直後の神戸新聞の記者たちの活動について実話に基づいたドキュメンタリードラマです。金居さんがモデルとなったカメラマンも出ています。凄惨な状況であった震災直後の神戸において、自らも被災し、また、苦しみ傷ついた人々を救助することもできず取材すること・カメラを向けることの意味を自問自答し、様々な葛藤と戦いながらも、情報を求める人々のために、そしていつか薄れゆく記憶を記録しておくために、取材し続け、新聞の発行を止めなかった神戸新聞。

 

震災のあまりの悲惨さと、記者たちの苦しみ・葛藤・情熱に心動かされ、多くの生徒が涙を流していました。また、鑑賞後は、「自分だったらそのとき取材できたか?」ということや、次週お越しいただく金居さんに直接聞いてみたい質問事項を一人ひとり考えてみました。

当日の様子

黒板に貼るもの、配布用、画像や映像…たくさんの資料をご用意いただきました。
黒板に貼るもの、配布用、画像や映像…たくさんの資料をご用意いただきました。
見方を解説いただきながら、新聞を広げてみます。
見方を解説いただきながら、新聞を広げてみます。
必死の想いで発行された、震災当日の夕刊を見せていただきました。
必死の想いで発行された、震災当日の夕刊を見せていただきました。
一人一人が様々に感じながら、真剣に耳を傾けていました。
一人一人が様々に感じながら、真剣に耳を傾けていました。

5月29日、金居さんにはたくさんの資料をお持ちいただきました。過去の新聞や、震災直後に実際に発行された記事などを黒板に貼り、また、この日の神戸新聞朝刊や、新聞が発行されるまでをわかりやすくまとめた資料などが、生徒一人ひとりに配布されました。教員がまず金居さんを紹介し、それから金居さんご自身に、自己紹介を兼ねて過去に撮影した写真を見せていただきました。その後、資料と動画を用いて神戸新聞と新聞発行について、朝刊を見ながら新聞の見方などもご説明いただきました。初めて新聞を読む、という生徒もおり、普段見ない社会面などに見入っていました。そして、阪神・淡路大震災でのお話。実際の写真や、当時のテレビ報道の動画を再生しながら、当時を振り返っていただきました。

 

何度も何度も「撮るな」と言われたり、怖い目にもあったりする中、被災者である自分たちにしかできない情報発信や、テレビも電話も何も無い中情報を求める人々に情報を届けることに強い使命感を抱いて、時に涙を流し、「ごめんなさい」と何度も言いながらも、あちこちを駆け回って被災地や被災者にカメラを向け、シャッターを切り続けたという金居さん。彼らがカメラに収めた画像は、震災の悲惨さを日本中・世界中に伝えることになりました。また、刻一刻と変化する光景や、風化していく記憶を“記録する”ことを非常に重要なことだと考えられたようです。前の週にドラマで見たことが、リアルな話として迫ってきて、生徒たちは真剣に聞き入っていました。ドラマでの金居さんの役の印象的なシーンを思い出し、胸にこみ上げるものがあった生徒も多くいたようです。

事後学習

心に残ったこと、仕事に対する考え方、みんなそれぞれに考えて書いてくれました。
心に残ったこと、仕事に対する考え方、みんなそれぞれに考えて書いてくれました。

5月29日の講話終了後、金居さんのお話を聴いて、また、事前学習から全体を通しての感想や心に残ったことを書いてもらいました。これまで、小学校や中学校で学び、また周りの大人の話から、阪神・淡路大震災についての知識を持った生徒はたくさんいましたが、今回のように「報道」という視点で震災について学んだことは非常に貴重な経験になったでしょう。

震災の凄惨さと同時に、記者やカメラマンの葛藤に心打たれたようです。そして、“記録”や“情報発信”に対する強烈な使命感と情熱に、新聞作りと報道のすごさを感じていました。「自分だったら撮影できない」、「圧倒されながらも、報道人としてその場に立ち会わなければ完全に理解できないのかもしれない」との感想を書いている生徒もいました。また、今回の講話を踏まえて、「“仕事”とはどのようなものであるか?」ということを一人ひとりに考えてもらいました。「自分の役割を果たすこと」「信念をつらぬくこと」など様々な考えが出てきましたが、「人のためのもの」というのが多く見られました。

所感 ・ 振り返り

金居さんからのご提案でしたが、事前にドキュメンタリードラマを見ていたことは、講話内容を深く印象付けるのに非常に効果的だったと思います。「その仕事に対する想いや情熱」を、阪神・淡路大震災という大きな出来事を通して学ぶことができ、強く心に残ったと同時に「仕事の意義と責任」について真剣に考える良い機会になったことと思います。

主催団体・参加者

私立 第一学院高等学校 養父校(神戸キャンパス) 1・2・3年次生

男子10名、女子7名